第二十三話「誓約」

とある湖にやってきた一同……そこで、サンダーは何か違和感を感じて立ち止まった。
チョコ「サンダー?…もしかして、またワルモンが?」
チョコモンは、いつもの事と言った感じでそう聞いた。
サンダー「あ…いや、そういうワケじゃないんだけど……(でも、この違和感……ココは聖域なんだろうな)。」
サンダーは、苦笑してそう答えると、少し考え込んだ。
ゴーレム「ゴー…ココ、ウンディーネの居た、湖。」
ゴーレムは、しばらく湖とその周りを眺めてから、そう言った。
ゲンキ「そうか、そういえば…ここ、見覚えが……。」
ゴーレムの言葉に、ゲンキはそう応えた。
ニナ「……ねぇ、ウンディーネって?」
ニナは、誰にともなく問いかけた。その後ろで、サンダー達(+ホッパー)も?マークを頭上に浮かべていた。
ホリィ「ウンディーネは、この湖の精で、ゴーレムのお友達なのよ。」
ホリィは笑顔でそう答えた。
サンダー達(+ニナ&ホッパー)「へ~~。」
…と、そんな話をしていると、水面が盛り上がって、そこから青色(で半透明な体)の女性(人魚?)が現れた。
ゲンキ達「ウンディーネ!!」
ゲンキ達がそう言うと、その女性は優しく微笑んだ。…どうやら、この女性がウンディーネという湖の精らしい。
ウンディーネ「ゴーレム、そして皆さん。お久しぶりです。」
ウンディーネは、笑顔でそう言った。その声はとても優しい感じがした。
ゴーレム「ゴー。ウンディーネ、久しぶり。」
ゴーレムも、それに笑顔で返した。
チョコ「あ、あの…初めまして。ぼく、チョコモンって言います。」
チョコモンは、ウンディーネの前に出てきて、そう自己紹介をした。
グミ「僕は~、グミモンだよ~。」
アメ「オレはアメモン。」
グミモンとアメモンは、チョコモンに続くように、そう自己紹介をした。
ニナ「私はニナ。…で、こっちはホッパー。こっちは、ギンギライガーよ。」
ニナは、ホッパーとギンギライガーを指して、そう言った。
サンダー「おれはサンダー。…あのさ、ウンディーネって、四大精霊でしょ?」
サンダーは、自己紹介のついでに、そう質問をしてみた。…すると、サンダーの頬を何か鋭い物がかすめていった。
一同「え……?」
ふと、一同がサンダーの足元に目を向けると、そこには氷の矢が突き刺さっていた。
一同「ウンディーネ?!!」
一同は、ウンディーネのほうに向き直ると、驚きの声を上げた。…何故なら、ウンディーネがサンダーの足元に向けて弓を構えていたからだ。
ウンディーネ「何故、私が四大精霊だと?…四大精霊の伝説は、この世界じゃもう廃れているはずよ。」
ウンディーネは、サンダーを睨んでそう言った。
サンダー「おれには、聖域の気配が分かるから。…そこにいる精霊なら、四大精霊の1人だと思った。…それにおれは、ココとは違う世界から来たんだ。」
サンダーがそう言うと、ウンディーネは氷の弓矢を構えた。
ウンディーネ「…じゃあ、何の目的でこの世界に来たの?…見たところ、ただの迷子ってわけじゃなさそうだし……何の目的で、自分の世界を飛び出したのかしら?」
ウンディーネは、サンダーを睨んだままそう問いかける。
サンダー「おれは……。」
そう言ったサンダーの脳裏に、タイムネットの世界での、とある出来事が蘇る……強大な敵の前に、成す術もない自分を庇って倒れた、灰色の竜型モンスター…
…そこまで思い出したところで、サンダーは我に返る。
サンダー「おれが自分の世界を旅立ったのは、友の仇を探して、そいつを倒すためだ。」
サンダーは、強い意志を宿した瞳で、ウンディーネを見据えてそう言った。
ウンディーネ「そう……つまりは、力が欲しいのかしら…?」
ウンディーネは、静かにそう問いかける。
サンダー「……まぁ、おおまかに言っちゃえば、そういう事になっちゃうかもね。」
サンダーがそう答えると、氷の矢がサンダーの正面めがけて飛んで来た。サンダーは、それを後ろに跳んで避けた。
ゴーレム「ウンディーネ、やめる!サンダー、ゴーレムの友達。」
ゴーレムは、そう言ってウンディーネを宥めようとする。
ウンディーネ「分からないわ!この子は、ゴーレム達を騙しているのかもしれないじゃない!」
ウンディーネは、そう訴える。
ライガー「サンダーは俺様の弟だ!こいつは、他人(ヒト)を騙したりなどするような奴じゃない!!」
ライガーは、そんなウンディーネにそう反論する。
ハム「……他人の物を掏るような子が、他人を騙していたとしても、何ら不思議はありませんがな。」
ハムは、ライガーの言葉を皮肉るようにそう呟いた。
ライガー「貴様…喰ってやる!!」
ハム「何ですと~?!」
…いつもの台詞で、2人はまた喧嘩を始める。
ギンギライガー「…兄さん、サンダーと喧嘩(ソレ)、どっちが大事?」
ギンギライガーは、状況も省みずに喧嘩を始める己の兄に、少し苛つきながらそう問いかけた。
ライガー「そんなもの、サンダーのほうが大事に決まっているだろう!」
ライガーは、喧嘩を一時中断して、当然といった顔でそう答える。
ギンギライガー「…じゃあ、喧嘩なんてしてる場合じゃないよね?」
ギンギライガーは、ドス黒いオーラを纏いつつ、笑顔でそう言った。…放っておいたら本気で怒り出しかねない弟の姿に、ライガーは軽く舌打ちをして、喧嘩をやめた。
チョコ「サンダーは、本当にぼくらの友達なんだよ!…ほら、サンダーも何か言ったら?」
チョコモンは、取り合えずウンディーネにそう訴え、サンダーにも何か反論するようにと勧める。
サンダー「えっと……;あのね、ウンディーネ。…おれはベツに、あんたの胆(キモ)なんかいらない。おれはただ、誓約をしてほしいだけなんだ。」
サンダーは、チョコモンの言葉に促され、取り合えずそう言ってみる。
ウンディーネ「誓約?…そんなもので良いの?」
ウンディーネは、拍子抜けしてしまったとでも言うように、キョトンとした顔でそう問いかけた。
サンダー「うんっ。…てか、おれは誰かの何かと引き換えに得る力なんかいらないもん。」
サンダーは、笑顔でそう答えた。
ウンディーネ「そう……ごめんなさいね、疑ってしまって………。」
ウンディーネは、申し訳なさそうにそう謝罪する。
サンダー「ううん、良いよ。…それよりさ、早く誓約してほしいなv」
サンダーの言葉にウンディーネは頷き、彼女は湖へと戻る。…誓約の為の準備にかかっているのだろう。
ウンディーネ「…じゃあ、始めるわよ。誓約の言葉は、分かるわね?」
ウンディーネの言葉に、サンダーは頷く。
サンダー「…あ、みんな、ちょっと離れてて。…おれ、今から誓約するから。」
サンダーが笑顔でそう言うと、一同は何が起こるか分からないながらも、3歩4歩と後ろに下がる。
…すると、辺りが暗くなり、湖だけが妖美に輝く。
誓約
サンダー「我、タイムネットの世界から来た守り主。字(あざな)を黄白狐(おうびゃっこ)という者なり。この世界を護る為、真の力を解放し、汝ウンディーネと誓約を交わしたい。」
サンダーは、長くて堅苦しい言葉を、珍しいほどにつっかえる事なく言い切った。
ウンディーネ「承知した。我、汝と誓約す。これより水は汝の下に集い、汝に危害は加えぬだろう。…汝の力、第一解放。」
ウンディーネがそう言うと、少量の水がサンダーの上に雨のように降り注いだ。…すると、辺りは再び明るくなり、湖の輝きも消えた。
オルト「……やっぱ、何回見ても慣れないよな…お前らのそれ。」
オルトは、小さなため息をついて、そう言った。
サンダー「そう?…特に珍しい事はしてるつもりないんだけどなぁ……。」
サンダーは、少し困ったように首を傾げてそう言った。
オルト「いや、制約のときって、湖とか炎とかメチャクチャ怪しく光ってて…綺麗なんだけど、やっぱ怖いって思っちまうんだよな。…だから、慣れないって話。」
オルトは、苦笑してそう言った。
サンダー「ふ~ん。」
サンダーは、生返事でそう返した。…見えないから、サンダーにはそれ以外に返す言葉が見つけられなかった……。


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